第3 争点に対する判断
被告代表者「これは、盗難はでるんですか?」、東「まあ、出る。」との会話も存在する。
また、11頁下段では、菊池が原告の営業所に電話で問い合わせ、その際「(前略)私のお客さんで、あの、大変高価な商品を、あのう、売買している、あのう、店があるんだけどね。日本雉園っていって。日本雉園。うん。それでもう、もう何年も前から、火災保険、まあ、総合だから、一番こわいのは盗難だから、総合で入れて、一億円入れてあるんだけどね。(中略)社長から、その、一番初め、高際が、あの、あれ、したんだけどね、あのう、結局、ほら、古い物は、もう、そういうものはなくなっちゃっているし、うん、だから、社長からはね、やっぱり、在庫をね、1年に何回かみるとか、鑑定士の人とかね、そういう風にして、現実にどういう動きが、ある、あるのか、そういうのを見て確認しておかないで、ただ、こっちが盗まれて、警察に届けて、警察が、あの、何百万の物が盗まれたという事故証明をだしたらね、すぐ、大東京がそれを払うのかと。それに対して、こういう書類をだせ、ああいう書類を出せと言ったって、それはないよと。それでまあ、年間1億位のねえ、あの、火災保険で、そうだよ。火災で入っている。なんか動産総合はとれないとかいうことでさ。 なんか馬鹿高いのかなあ。動産でやると、すごい高くなっちゃうんで、動産だと、細かく1件1件ださなくっちゃいけないとかね。うん。じゃ、火災を主体として、火災の盗難担保があるから、それで、うん、うん。総合だから、店舗総合だからね。」と発言している。
イ アで引用したとおり、菊池は、平成11年2月17日の被告代表者との面談の際、被告との間の保険契約が商品の盗難の場合を填補すると認めたと解釈できる発言を行っており、乙4(1)を読む限り。最後まで、菊池は、本件保険契約は商品の盗難の場合は填補しない旨の発言はしていない。
この点について、菊池は、その証言において「マリン建設の代表者である池田との契約と混合した。」「従前和やかに接した被告代表者が、この日は、険しい態度で臨み、初めに、被告代表者が「この保険は商品の盗難の場合も填補されるのだろう。」と発言したので動揺し「はい」と言ってしまったために、その後墓穴を掘ることとなった。」などと説明している。
しかし、前記1(1)で認定したとおり、菊池は、昭和47年の開業以来、上記会話の時点まで、約27年間、保険代理店を営んでいたものであって、その間には、保険契約者ら顧客との間の、保険契約を巡る紛争や苦情などに接したことが少なからずあるものと推認できる。また、本件の証人尋問における供述態度や物腰などからしても、上記会話の際、被告代表者の発言や追求から、たやすく冷静さを失ってしまったとは考え難い。
なお、乙4(1)の6頁には、本件保険契約の目的となる物件について、菊池は「あ、あれ、一番初めの頃は細かく明細を書いたんですよね?」述べ、被告代表者が「何もやらないよ。だから、やらない。」と答えたのに対し、「だから、初めの頃。」と発言している箇所もあり、保険の目的である高価品の一覧表を作成した、池田との間の保険契約と混合していると読める部分もある。しかし、前記、11頁下段から始まる発言では、被告との間の保険契約について、池田と契約した動産総合保険とは内容的に異なることが充分意識された発言内容となっており、「店舗総合」という用語も口にしている。
そして、乙4(1)に記された被告代表者の発言と合わせ読むならば、菊池は、本件保険契約が商品の盗難の場合も填補されることを前提に、被告代表者の指摘する、盗難に遭った商品の存在や盗難の事実をどのように立証すべきなのかの問題について、説明したり、原告の営業所に問い合わせていると評価できる。また、東も、時折口を挟んでいるが、本件保険契約が商品の盗難の場合を填補するかについて、明確に否定する発言はしていない。
なお、原告は、この日、東や菊池は、本件保険契約に関する書類を何ら持たずに被告事務所に行ったと主張し、菊池もこれに沿う証言をしているが、およそ保険会社の従業員や代理店を営む者が、顧客から保険契約のことで呼ばれながら、何ら関係する書類を持参せずに行くということは考えられないことであり、かつ、乙4(1)冒頭の東の発言に照らしても、本件保険契約に関する書類を持参した上、て適宜これを参照しながら発言したものと認められる。
3 被告の主張(2)(予備的主張)について
(2) 次に、その主張の当否、すなわち、明記物件についての原告側の説明の問題については検討するに、証拠(証人菊池陸郎、同高際好紘及び被告代表者、甲2)及び弁論の全趣旨を総合すると、本件保険契約にあっては、美術品で1個又は1組の価値が30万円を超えるものについては、これを保険証券に明記されていないときは保険の目的に含まれないところ(明記物件、甲2の3条3項)、本件保険契約の締結に当たり、高際らは、被告に対し、こうした説明は明示的にはせず、かつ、被告の保管する美術品について、個々的に、その存在及び価格等を確認しなかった事実を認めることができる。
〜 以上原文より抜粋しました。 〜
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